「もう朝日新聞に逃げ場はない (池田信夫)」 より

「もう朝日新聞に逃げ場はない(池田信夫)」より

もう朝日新聞に逃げ場はない 池田信夫 2012年08月31日 09:51
http://blogos.com/article/45958/
慰安婦問題で逃げ回っていた朝日新聞が、やっと社説を出した。

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見過ごせないのは、松原仁国家公安委員長安倍晋三元首相ら一部の政治家から、1993年の河野官房長官談話の見直しを求める声が出ていることである。

河野談話は、様々な資料や証言をもとに、慰安所の設置や慰安婦の管理などで幅広く●軍の関与を認め、日本政府として「おわびと反省」を表明した。多くの女性が心身の自由を侵害され、名誉と尊厳を踏みにじられたことは否定しようのない事実なのである。

松原氏らは、強制連行を示す資料が確認されないことを見直しの理由に挙げる。●枝を見て幹を見ない態度と言うほかない。
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韓国政府が攻撃しているのは「軍の関与」ではない。それは日本政府が最初から認めている。彼らは日本政府が「強制連行」を認めないと攻撃しているのだから、それがあったかどうかは●「枝」ではなく「幹」の問題である。

しかも朝日新聞が1992年1月11日の記事では「太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を●挺身隊の名で強制連行した」と書き、これが韓国の攻撃の根拠になっている。

朝日新聞は、「強制連行」が誤報だったことを実質的に認めているのだ。しかし今さら間違いを認めると社長の責任問題に発展するので、それはどうでもよい枝の問題だと主張している。
これは2007年に強制連行についての閣議決定が行なわれたときも、朝日新聞の使った逃げ口上だ。

この閣議決定では「調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、
●軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである」
と明確に強制連行を否定しており、「官憲等が直接これに加担した」という河野談話とは矛盾する。
松原氏などが主張しているのも、閣議決定にそって(閣議決定されていない)河野談話を見直すという当然のことだ。

要するに、強制連行の有無こそ唯一の争点なのだ。もう逃げ場はない。

まず朝日新聞が、慰安婦に関する一連の記事について訂正し、官憲による強制連行がなかったことを明記することが、こじれた日韓関係を解きほぐす出発点だ。それが枝の問題か幹の問題かは、日韓両国の政府と国民が判断すればよい。

朝日社説全文は以下

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河野談話―枝でなく、幹を見よう

 旧日本軍の慰安婦問題をめぐって、日韓関係がまたきしんでいる。

 きっかけは、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が今月、竹島に上陸したのは、慰安婦問題で日本政府の対応に進展がなかったからだとしたことだ。

 これに対し、野田首相が「強制連行の事実を文書で確認できなかった」と語ったことが、韓国国内で「歴史の歪曲(わいきょく)」などと反発を広げている。

 歴史問題を持ち出してナショナリズムをあおるような大統領の言動には首をかしげる

 だが、日本の政治家の対応にも問題がある。

 見過ごせないのは、松原仁国家公安委員長安倍晋三元首相ら一部の政治家から、1993年の河野官房長官談話の見直しを求める声が出ていることである。

 河野談話は、様々な資料や証言をもとに、慰安所の設置や慰安婦の管理などで幅広く軍の関与を認め、日本政府として「おわびと反省」を表明した。

 多くの女性が心身の自由を侵害され、名誉と尊厳を踏みにじられたことは否定しようのない事実なのである。

 松原氏らは、強制連行を示す資料が確認されないことを見直しの理由に挙げる。枝を見て幹を見ない態度と言うほかない。

 韓国の人たちにも、わかってほしいことがある。

 河野談話を受けて、日本政府の主導で官民合同のアジア女性基金を設立し、元慰安婦に対して「償い金」を出してきた。それには歴代首相名のおわびの手紙も添えた。

 こうした取り組みが、韓国国内でほとんど知られていないのは残念だ。

 もっとも、今回に限らず日本の一部の政治家は、政府見解を否定するような発言を繰り返してきた。これではいくら首相が謝罪しても、本気かどうか疑われても仕方ない。

 5年前、当時の安倍首相は当局が人さらいのように慰安婦を連行する「狭義の強制性」はなかった、と発言した。

 その後、米下院や欧州議会慰安婦問題は「20世紀最悪の人身売買事件の一つ」として、日本政府に謝罪を求める決議を採択した。

 自らの歴史の過ちにきちんと向き合えない日本の政治に対する、国際社会の警鐘である。

 河野談話の見直しを求める政治家は、韓国や欧米でも同じ発言ができるのだろうか。

 野田首相も誤解を招く発言は避け、河野談話の踏襲を改めて内外に明らかにすべきだ。