『密約文書破棄―国民への背信ではないか』:何が悪いか判らぬ密約とあったかどうかわからぬ文章破棄は別の話

http://d.hatena.ne.jp/oguogu/20090711/1247298671
酔っ払いのうわごと
2009-07-11
■[朝日新聞][政治]密約と文章破棄は別の話

密約文書破棄―国民への背信ではないか
(cache) asahi.com朝日新聞社):社説 2009年7月11日(土)
http://s03.megalodon.jp/2009-0711-1213-19/www.asahi.com/paper/editorial20090711.html
 1960年の日米安保条約改定の際、核兵器の持ち込みをめぐる日米密約が交わされた問題で、またもや新たな証言が飛び出した。
 情報公開法が施行された01年ごろ、当時の外務省幹部が密約の関連文書をすべて破棄するよう指示していた。元政府高官が匿名を条件に朝日新聞にそう明らかにしたのだ。
 これまで政府は、核艦船の一時寄港などは持ち込みとはみなさないというような密約は「存在しない、従って文書も存在しない」と繰り返し国会で答弁してきた。
 だが、最近になって、80年代後半に外務事務次官を務めた村田良平氏が密約の存在を認め、「事務用紙1枚に書かれて、封筒に入っていた」という文書が、歴代事務次官に引き継がれていたと語った。
 これに続く「破棄指示」の証言である。本当に破棄されたかどうかまでは確認されていないという。

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それにしても何なのでしょう、最近の“密約”に関する騒ぎとは。政権交代が起こると、自民党政府が吐いていた嘘が明らかになるという宣伝なのでしょうか。
私が、そう思うのは、村田元外務次官が『密約の存在を認め』たのは、最近の事では無いからです。村田元外務次官が『密約の存在を認め』たのは、去年出版した『村田良平回顧録』(ミネルヴァ出版)に於いてです。この本は、出版された時にも書評が日本経済新聞に書かれ、元外交官の天木直人氏もブログで引用するなど、それなりに話題になりました。朝日新聞の言う『最近になって』には、何らかの意図があるとしか思えないのです。

今日の社説にしても、何処までが事実なのでしょう。私は、『匿名を条件』に朝日新聞に語ったと云う『元政府高官』の存在その物を含めて疑問を感じています。大体に於いて、『本当に破棄されたかどうかまでは確認されていない』にも関わらず、破棄された事が前提で、『国民への背信ではないか』と言われても困ります。朝日新聞も報道機関であるなら、破棄されたか破棄されていないのかを確認してから社説で書くべきです。それが無理だと言うのであれば、せめてタイトルは「国民の疑問に答えよ」程度しか許されないのではないのでしょうか。私は、タイトルからし自民党は国民を裏切っているから政権交代が必要だと云う世論作りへの誘導を感じてしまいます。

それに、朝日新聞は廃棄されたとされる文章が、どのような物であるのかをこの社説の中では明らかにしていません。それは村田元外務次官の言う『事務用紙1枚に書かれて、封筒に入っていた』文章を指すのでしょうか。しかし、それでは機密文章としては重みに欠けるような気がします。誰かに指示する前に『当時の外務省幹部』が、それこそ自分で握り捨てれば済む話だからです。

社説の後ですけれど、朝日新聞には、このような記事も載せられました。

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asahi.com朝日新聞社):「核密約」文書、かつては外務省で保管 国会対応要領も - 政治
http://www.asahi.com/politics/update/0711/TKY200907110104.html
 元幹部の説明では、保管されていたのは、米側で公開された公文書と同内容の英文文書。60年の安保条約改定交渉の際に「米軍機の日本飛来、米海軍艦艇の日本領海並びに港湾への進入に関する現行の手続きに影響を与えるものと解釈されない」と合意した秘密文書や、「米国の艦船及び航空機の日本国内の港、基地への立ち寄り」は「装備の内容は問わず」事前協議の対象から除くことを確認した文書が含まれていると見られる。
 74年にラロック元米海軍少将が「日本寄港の際、核武装を解かない」と証言した際や、81年にライシャワー元駐日米大使が密約の存在を証言した際に外務省内で極秘に行われた議論と、その結果まとめられた国会向けの対応要領なども保管されていたという。

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朝日新聞は、外務省が大量の資料を隠匿していたかのように印象付けたいのでしょう。しかし、『米側で公開された公文書と同内容の英文文書』は隠す必要があるのでしょうか。『国会向けの対応要領』も、アメリカ側の話が日本に伝わった直後の国会開催中は秘密にしておく必要があったかも知れませんけれど、総理大臣なり外務大臣が答弁してしまえば秘密にする必要は薄れます。

そうなると、もし、外務省が隠していたとしたら重大なのは、『安保改定交渉の際に』『合意した秘密文章』と『事前協議の対象から除くことを確認した文書』だけです。

しかし、この文章と云うのは、本当にあったのでしょうか。毎日新聞のコラムに、このような記述があります。

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早い話が:もしも政権代わったら=金子秀敏 - 毎日jp(毎日新聞)
http://www.mainichi.jp/select/opinion/kaneko/news/20090709dde012070043000c.html
 核を搭載した米艦船の日本寄港は事前協議の対象から外す、つまり、米国の自由裁量でできるというのが密約の内容だ。非核三原則のうち「持ち込ませず」には風穴が開いている。それを公表したらどういうことになるか。
  米国側はとうにライシャワー元駐日大使の証言や、その後公開された公文書で「口頭了解」として公表しているから、たいした衝撃はない。

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密約なる物が『口頭了解』で成されたとするならば、合意文章は作られなかったと考えた方が合理的だと私には思えます。普通、合意文章は2通作られ双方が所持しておく物だからです。考えてみれば、アメリカの公文書の公開によって合意文章が出ていれば、マス・メディアの政府追及も、もっと激しかったはずです。政府も否定し続ける事は難しかったかも知れません。政府がライシャワー証言があろうと開き直れたのは、合意文章の存在が本当に無かったからではないのでしょうか。何と言ってもライシャワー大使の証言した1981年は、まだ冷戦の最中で社会党も健在でしたし、朝日新聞は今以上に左寄りだったのですから。

私も密約その物は存在したのだとは思います。しかし、この密約とは、それほど目くじらを立てるほどの物でしょうか。アメリカの軍艦が日本の港に立ち寄るのに、わざわざ核兵器をハワイやグアムに置いてくるかと考えれば、中学生だって非核三原則が建前だけであるのは解りました。非核三原則と日本の安全、どちらが大事かは言うまでも無いでしょう。当時必要だった嘘は、そっとして置くのが大人の知恵だと私は思います。政府の嘘と言っても、NASAのサンタクロース探知レーダーのように綺麗な嘘もあるのですし。