朝日新聞が、社説で「拉致問題は日朝国交正常化の『障害』」と主張

朝日新聞が、社説で「拉致問題は日朝国交正常化の『障害』」と主張

http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2001/00997/contents/00057.htm
朝日新聞朝刊 1999年08月31日
テポドン」一年の教訓 北朝鮮政策(社説)
 
 「テポドン発射」から一年がたった。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の一発のミサイル実験が、日本にいかに大きな政策転換をもたらしたか。
 戦域ミサイル防衛の日米共同開発や、偵察衛星の自主開発が決まった。この春には、北朝鮮工作船に対する海上警備行動が発動され、自衛隊による「領域警備」が防衛論議の前面に躍り出た。
 日米防衛協力指針の法制化もまた「テポドン効果」抜きには語れない。
 この間の外交も、日米、日韓、日中の首脳会談など様々な機会を通じて、北朝鮮に新たな発射実験をやめさせることに、もっぱら精力が傾注されてきた。
 目的が仮に人工衛星の打ち上げだったとしても、露骨な戦争宣伝を重ねてきた隣国のミサイル発射実験に、脅威感や不安を抱くのは当然である。
 開発の継続が米朝関係や朝鮮半島情勢を緊張させ、東アジアの軍拡競争の引き金を引く恐れも、軽く見てはなるまい。
 とはいえ、こうした政策転換や、その背景にある政界の雰囲気を思い返すとき、くみとるべき教訓もきわめて大きい。
 なにより、関心がミサイルへの対処や再発射の「阻止」に集中するあまり、北朝鮮問題の打開に向けた包括的な政策の検討がおろそかになったことである。
 北朝鮮は経済、食糧危機をしのぐため、ミサイルなどの輸出で外貨を稼ぐ一方、ミサイル開発や核疑惑を交渉の武器に、米国から援助を取り付けようとしている。体制維持のための瀬戸際外交である。
 この姿勢に変化がなければ、ミサイル問題の真の解決は望めまい。考えるべきは、国際社会とともにその変化を促し、速めるにはどうしたらいいかである。
 ところが、脅威にどう対処するかは語られたものの、北朝鮮の門戸をいかに開かせるかという、本筋の議論はほとんどされてこなかった。
 北朝鮮への「先制攻撃」の可能性をめぐって行われた国会論議は、その典型であろう。日米韓の連携を強めるどころか、米韓、中国を困惑させただけだった。
 再発射実験をすれば、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)への拠出を凍結すべきだとの主張もある。この拠出は、核開発を抑えるための安全保障のコストである。米韓との協調を損なってはならない。
 米国のペリー政策調整官の平壌訪問や、中朝関係の新展開をへて、このところ、北朝鮮の態度に軟化の兆しが見え始めた。ミサイル問題や経済制裁緩和をめぐる、来週の米朝高官協議は、こうした流れの重要な節目となるかもしれない。
 北朝鮮は日本に向けても、「敵視政策の転換」や過去への「謝罪と補償」を条件に、国交正常化交渉の再開を示唆した。
 慎重な見極めは必要である。同時に、日本側も北朝鮮の姿勢の変化を的確にとらえ、人道的な食糧支援の再開など、機敏で大胆な決断をためらうべきではない。

 日朝の国交正常化交渉には、日本人拉致疑惑をはじめ、**障害**がいくつもある。
 しかし、植民地支配の清算をすませる意味でも、朝鮮半島の平和が日本の利益に直結するという意味でも、正常化交渉を急ぎ、緊張緩和に寄与することは、日本の国際的な責務といってもいい。
 戦争を防ぎつつ、北朝鮮の変化を促す環境を整備し続ける。必要なのは、この作業に取り組む粘り強さである。